両方を一度に狙うのは魔法じゃありません。要は「どこで勝ちたいか」を最初に決めて、それぞれの勝ち筋を重ね合わせる設計を作ればいいだけです。ここで大事なのは戦術の数ではなく、戦術が目的に対してどう繋がっているかを示す図を一枚作ること。つまり、見せ方と測り方を最初に揃えれば、パフォーマンスもブランドも同時に育てられます。
具体的には4つの柱を明確に。1つ目はKPIのマッピング:短期(CV、CTR)と中長期(ブランド認知、好感度)を階層化する。2つ目はクリエイティブ設計:短尺で訴求するパフォーマンス素材と、物語で刺すブランディング素材をセットにする。3つ目はターゲティングのレイヤー化:既存見込み層には効率重視、新規層には認知重視の接触頻度を。4つ目は測定窓の設定:短期指標とブランド効果を別々に追い、因果が見えるようにしておくこと。
設計の現場で使える小ワザも紹介します。キャンペーン設計書はA4一枚に集約して関係者へ共有、予算は最初の3週で仮説検証に回してからスケール、シーケンス配信でファネルの役割を明確化、そして必ずABテストを組み込むこと。頻度上限やクリエイティブの切替タイミングをルール化すると、ブランド毀損リスクを抑えつつ最適化できます。
結局のところ勝負は設計で決まります。走りながら考えるのは必要ですが、その前に「何をもって勝ちとするか」を共通言語にしておけば、一つのキャンペーンでズルく両取りする道は確実に見えてきます。
「全部を追いかける」キャンペーンは散らかりがち。そこで一枚シート作戦です。上段にゴールを縦に並べ(認知→検討→獲得)、横軸にKPI、ターゲット、クリエイティブ、CTA、予算、期間を配置すれば、一目で全景が見えるようになります。チームの会話も短く済むし、言い訳の余地が消えるのが地味に嬉しいポイント。
作り方はシンプル。各ステージごとに成功定義と測定方法を入れるだけでOK。例えば「認知」ならブランドリフトやインプレッション、「獲得」ならCPAやコンバージョン。テンプレートが欲しいときは実際に使えるツールをワンクリックで確認してみてください:SMM パネル。初回は既存キャンペーンのデータを埋めるだけで効果が見えてきます。
運用のコツは二つ。ひとつはリソース配分を週次で見直すこと。反応が早いチャネルには短期バジェットを、ブランドに効く施策には持続予算を割く。もうひとつは計測窓の分離。ビュー系は長め、クリック系は短め、と役割を区別して評価すると混乱が減ります。A/Bは小さく頻繁に、勝ち筋は即拡大。
最後にチェックリストを四つだけ:測定可能なKPI、明確なCTA、予算と期間、報告フォーマット。これをシートに入れて毎週1回、チームで5分レビューすれば、ブランドとパフォーマンスを両取りする施策設計が習慣化します。面倒な作業は嫌いでも、勝ち筋を可視化するのは好きになりますよ。
一つの広告枠で「指名買い」と「獲得」を両方取る近道は、クリエイティブをただ増やすのではなく「分身」させること。核となるビジュアルやトーンは一本化してブランディングを守りつつ、コピーや尺、CTAだけを切り替えて別人格に見せると、同じユーザー層に対して異なる反応を引き出せます。
実践の肝は役割分担。ブランド寄りの分身は感情を動かすビジュアルとロングコピーで印象を残し、獲得寄りの分身は短尺・明確なオファー・強いCTAで即行動を促す。フォーマットを共通化しておくと制作効率が上がり、ABテストも回しやすくなります。
運用面では同一キャンペーン内でクリエイティブごとに入札戦略や最適化の優先度を変えるのがミソ。動的クリエイティブやモジュール化したアセットを使えば、配信先ごとに最適な「分身」を自動で当てられるし、クリエイティブの勝ち筋が一目でわかります。
まずは短期で小さく実験を。例えば開始1週間はブランド版を低予算で温めつつ、獲得版に主予算を置く。KPIは認知と直接CVを分けて追い、勝った分身に順次配分をシフトすれば、1本のキャンペーンで両取りする確率がぐっと上がります。
キャンペーン予算は「守備」と「攻め」の両輪。初動はお試しで60:40(パフォーマンス60、ブランディング40)を推奨。短期CV獲得に厚めに振ってテストで勝ち筋を作り、ブランド接触は中長期の種まきとして安定させるイメージ。週次で結果を見て50:50や70:30へスライドする柔軟さが肝。
入札は目的に合わせて武器を切り替える。コンバージョンはCPA/ROAS目標に基づく自動入札、認知はCPMやビュー課金でリーチ優先。ひとつのアカウント内で入札戦略を混在させ、入札上限はクリティカルなクリエイティブにだけ設定して無駄な学習阻害を避ける。
配信面は“分散と集中”を使い分ける。ブランドはプレミアム枠や動画フィードで広く浅く、パフォーマンスは高CVRのプレースメントやリターゲティングで深く。頻度はブランド2~3回/週、リターゲットは5~7回で勝負。デバイス別・時間帯別で最適化して費用対効果を底上げしよう。
運用のリアル設定は数値化と自動化で楽にする。KPIを明確に分け(例:CPRとVTR)、7日ごとの自動ルールで低パフォーマンスを縮小、高効率はバジェットを自動で増額。クリエイティブはローテーションで疲弊を防ぎ、勝ちパターンが見えたら即スケール。これで一つのキャンペーンから両方を“こっそり”回収する戦略が完成する。
キャンペーンが「ブランディング寄り」になったり「パフォーマンス一辺倒」になったり、社内でKPIが迷子になる光景はもはや日常茶飯事。両取りを狙うなら、指標を増やして混乱させるよりも、チーム全員が同じ地図を見られるように共通の「北極星」と意思決定ルールを先に決めるのが早道です。感覚や気分で動かず、数字で合意するクセをつけましょう。
まずは階層を三つに分けます。トップは短く分かりやすい「北極星」—例:認知ならブランド検索増加率、獲得ならLTVで見たいKPI。ミドルはキャンペーン固有の成功指標(例:エンゲージメント率×質のスコア)、ボトムは現場が触る実行指標(CTR、CPC、インプレッション、コンバージョン)。各層で「合格ライン」と「許容レンジ」を決めておけば、数字がぶれたとき即判断できます。
実務では「もしAならこうする、Bならこうする」という意思決定ルールをテンプレ化しておくと捗ります。例えば、ブランド指標が想定より10%以上上昇しているがCPAが20%悪化している→継続して別配信で最適化、もしくはクリエイティブを分割してテスト。逆にCPAが改善しているのに認知が落ちている→配分を微調整して認知枠を補填。こうしたルールはチャンネル別にも用意しておくと強いです。参考に本物の Instagram 成長 ブーストの考え方を部分的に学んで応用できます。
最後に運用のリズムを決めましょう。週次でオペレーション指標、隔週でミドル指標、月次で北極星レビュー。誰がどの数字で「ストップ」か「スケール」か決めるのかを事前に明記すれば、パフォーマンスとブランディングを一本のキャンペーンで賢く両取りできます。
Aleksandr Dolgopolov, 11 November 2025